#4 但馬木彫


木と向き合い、自分と向き合い、作品を産み出し続ける。


大屋町を散策していると、いたる所で木彫りの作品に出会う。それは招き猫であったり、ユーモラスな鯉であったり。木の温もりと素朴な色合い、あどけない表情が心なごませてくれる。

現在、大屋には芸術家が住みつき、芸術文化地域を形成している。その核となるのが「但馬木彫」の松田一戯さんだ。彼のつくり出す「木彫フォークアート」は、生活と親しい美術作品。「始めたのは43年前。それまでは東京でポップアートの作品をつくっていました」。父の病気もあって地元大屋に戻り、当初はこの地での創作活動として蛇紋岩による彫刻を考えていた。その練習用に始めたのが木彫だった。以来クスノキを素材として、創作活動を続けてきた。伝統もなく、学ぶ師もなく、すべて独学という木彫作品は、斬新なフォルムの現代彫刻の大作から、動物をモチーフとする小品まで幅が広い。神や精霊を思いおこさせるような物語性のある作品は、私たちの記憶の中にある忘れられた世界を蘇らせてくれる。「いちばん難しいのは、自分のイメージしたものを作品の上に表せるか」。これが木彫におけるセンスだという。平面に描かせたら上手くても、立体にするのはまた別の感覚。さらに辛抱も必要という。

木の国である日本は、建築や神社仏閣の彫刻など、木の造形に優れた作品を残してきた。その反面、庶民の生活の中で生まれた木彫造形は極めて少ない。「木彫はノミや彫刻刀を使って、ひとつの塊から型を削り出すという大変な技術と作業が必要だから、どうしても高価になる」。そうやって敷居が高くなった木彫を庶民の手に取り戻すように生まれた木彫フォークアートは、多くのファンを獲得した。そのいっぽうで松田さんは現代彫刻の作家としての顔も持つ。「ある時は招き猫の木彫りのおっちゃんだったり(笑)、現代美術の作家だったり。ともにつくり続けないとバランスがとれない。ただ最近はアートとフォークアートの境目がなくなってきていて、いずれそれが一本になっていくような気がしています」。

(2014年12月発行 YABUiRO Vol.5掲載)

 


但馬木彫
松田一戯、松田政人、故・石田えいじ、松田京子からなる木彫集団。4人が創りだす木彫フォークアートは、但馬という土地柄を写したような素朴で温かい色使い風合いが特徴。
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兵庫県養父市大屋町和田56-1
tel 079-668-0185
http://www.tajimamokutyou.jp/

 

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