#7 養蚕農家


古きもの、それは 時間という名の神様しかつくりえない、かけがえのないもの


養父市大屋町では、江戸時代後期から昭和にかけて、養蚕が盛んにおこなわれてきた。こと大杉地区は12戸の3階建て養蚕農家が立ち並び、兵庫県の「歴史的景観形成地区」に指定されている。地元で建築事務所を経営する河辺操さんは、築150年以上の古い養蚕農家を親戚から預かっていたが、1階の柱の柱脚は多くが白アリの被害を受けており、残す価値があるのか判断しかねていた。しかし兵庫県ヘリテージマネージャーの講習会に参加したのをきっかけに、「改修して残すのが、自分の責任である」と考えるようになった。

工事を進めるなか、梁の取替えや柱の補強などが必要となり、古い板や梁・柱をとりはずし、再利用をする材料を下ごしらえしていくうちに、肌で感じたことがある。「古い材料は〝時間〟という名の神様しかつくることができない、それはとても貴重なものなんです」。古民家には、先祖の歴史や時間の積み重ねといった、そこにしかない大切なものがある。さらに養蚕農家には「お蚕さま」と人の日々の営みの跡がたしかに残されていた。養蚕には温暖飼育という方法があり、室内温度を効率的に管理するため、いちばん広くて良い場所に蚕を住まわせ、家族は狭くて寒い場所で生活をしていた。越屋根、板戸、土壁など、蚕を飼育するための工夫が随所に見られる。にわ(庭)〜台所に架かる梁に鉄砲(火縄銃)の形に似た丸太が使われているが、これは大杉の農家の特徴だという。

建物の歩みを大切にしつつ、そこに新たな息吹を吹き込む動きも見られる。観光分野の規制緩和を生かした特区事業で、空き家となった養蚕農家を改修した「古民家の宿 大屋大杉」が、今秋オープンした。「自分の家を改修して、初めてその価値に気がついた。今の時代、これほど時間を積み重ねたものが残っているのは、贅沢なこと。町の文化を育み、暮らしを支えた養蚕農家を大切に守っていくことが、地域の再生につながるのかもしれない」。

(2015年12月発行 YABUiRO Vol.7掲載)

 

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ふるさといろりの会
旧大屋町時代に行政が修復した一軒貸しする宿泊施設。「ふるさと交流の家いろり」を管理・運営するにあたって設立された。大杉の休耕地で米づくり、野菜栽培なども行っている。
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養父市大屋町大杉1062 tel 079-669-0026
http://www.fureai-net.tv/aaoosugipc/irori.htm

 

 

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