#13 寺田正之さん、宮崎一彦さん


製造業のプロが トマト栽培でみせる 次世代農業のあり方


 

アイメック農法とは養分に浸った不織布の上に特殊なフィルムを敷き、その上で苗を成長させる農法。フィルムに開いたナノサイズの穴から不織布に浸みた養分を摂取させることで甘く栄養価の高いトマトを育てる。

アイメック農法とは養分に浸った不織布の上に特殊なフィルムを敷き、その上で苗を成長させる農法。フィルムに開いたナノサイズの穴から不織布に浸みた養分を摂取させることで甘く栄養価の高いトマトを育てる。

養父で育った企業の誇りを持って、農業参入

農業とは、その土地の特性を活かし、気候や風土に適した作物をつくるもの。

そんな常識を覆し、積雪や日照不足で施設園芸は不利だと言われている養父市で、高糖度のハウストマトの栽培に成功した人たちがいる。農業用機械メーカー「八鹿鉄工株式会社」内にアグリ事業部を立ち上げ、アイメック農法によって「甘えん坊の赤オニくん」という高糖度トマトづくりをおこなうのが、こちらの「ベジ×ふる あさくら彩園」だ。

「茎や実にうっすら毛が生えていると、水を欲しがっているサインで、室内の湿度を吸おうとしている。これも美味しいトマトの条件なんです」。日々刻々と変わる小さな違いも見逃さず、栽培管理しているのは、アグリ事業部の責任者、寺田正之さんと宮崎一彦さん。毎朝、2万本近くの苗の状態を、1時間ほどかけて見るのが、お二人の日課だ。

 

「藁切り機」のオレンジから「トマト」の赤へ

養父市で創業し、74年目を迎える八鹿鉄工には、先代社長が開発した「藁切り機」にまつわる逸話がある。当時、全国に通用する〝ものづくり〟を目指して自社開発された「藁切り機」。全国に出荷となれば、当時の運送手段として「国鉄貨物」が一般的であった。夕刻の貨物列車が駅に入ってくるのを待ち、八鹿駅のホームにズラリと並んだオレンジ色の藁切り機。それが夕日と相まって染まり、えも言われぬ美しい風景をつくり出したという。

長い歴史を経て、最近では海外への工場移転の話も出たが、「但馬で育った企業だから、この地で頑張ろう」と決意を新たにした。寺田さんと宮崎さんに工場横の更地を使って、新規事業を考えるよう命じられたのは、2年前のちょうどその頃。これまで製造業一筋、農業に関しては素人集団だが、「地元でするなら農業しかない」と、養父市商工会に相談を持ちかけ、一緒に勉強した。ある時、農業関係に長けている専門家のアドバイスを受けた際に、アイメック農法でつくられたトマトを食べた宮崎さん、その甘さに衝撃を受けた。今まで食べていたトマトと全然違う。これで行こうと決めた。

 

但馬の厳しい冬の中でも安定的に生育させるため、養父市の間伐材を「薪」として再利用したボイラーを導入し、通年生産をおこなう。焼き終えた炭は肥料にもなり、エコの部分でも有効な活用方法を目指す。

但馬の厳しい冬の中でも安定的に生育させるため、養父市の間伐材を「薪」として再利用したボイラーを導入し、通年生産をおこなう。焼き終えた炭は肥料にもなり、エコの部分でも有効な活用方法を目指す。

農業と真剣に向き合う。地域の活性化につなげたい

昨年6月に発売されたトマトは通常の倍の「糖度9.6」を実現し、道の駅では完売。現在は但馬地域を中心に関西や香港にも出荷している。当面の目標はこの「糖度9.6」のトマトを安定供給できるようにすること。

アイメック農法の特徴であるフィルム栽培では、フィルムの内側にある液体から養分を吸収しようとトマトが毛根を伸ばし、通常の2〜3倍の糖度になるという。ただこれは理論上の話。そのままでは美味しいトマトにはならないという。「それプラス、栽培者の考えを付加することで味の変化がつけられるのが、この農法の魅力なんです」。だから毎朝6時半にはハウスに赴き、育成をチェックする。「毎日見ていると、子どもみたいで、愛着が湧いてきます」。これは製造業では味わえなかった喜びだ。「まずは安定供給。さらにもっと美味しく。いずれは全国制覇したいですね」。

 

_

八鹿鉄工株式会社

1941年に創業し、大手農機具メーカーのコンバイン部品や、除雪機などを製造。
2013年より自社敷地内にメビオール株式会社が開発したアイメック植物栽培システムを導入して、
高糖度トマトなど付加価値の高い野菜・農産物の生産を開始した。
_
養父市八鹿町朝倉200  TEL 079-663-2333
http://www.asakura-saien.com/

 

 

こちらの記事もオススメです