#14 梅谷幸男さん


親孝行な朝倉山椒で、集落を元気にする新たな名産品を


 
新しい名物をつくらなければ。村人が立ち上がった

無添加でつくられる「山椒ジェノベーゼ」、材料には、地元で採れた朝倉山椒に、厳選したエクストラバージンオイル、大屋産のニンニク、松の実などが入っている。

無添加でつくられる「山椒ジェノベーゼ」、材料には、地元で採れた朝倉山椒に、厳選したエクストラバージンオイル、大屋産のニンニク、松の実などが入っている。

作業所は、目も覚めるような爽やかな山椒の香りで満ちていた。そこでつくられていたのは、色鮮やかなジェノベーゼだ。

畑地区は、市内でも有数の「朝倉山椒」の生産地。地区全戸が組合に属しているという、畑特産物生産出荷組合では、長年にわたり朝倉山椒をはじめとした特産物の生産・加工をおこなってきた。

これまでの山椒の加工品と言えば、佃煮が定番で順調に売り上げを伸ばしてきたが、近年は、高齢化と景気の低迷等により売り上げは低下傾向で、打開策が求められていた。「組合の中でも、〝なにか新しいものをやりたい〟という機運が高まっていた。新商品の開発は、長年の課題だった」。4年前に組合長に就任した梅谷幸男さんは、当時を振り返る。新たな需要を開拓するため、デザイナーや野菜ソムリエ、フードコーディネーターの協力を得て、洋食に合う調味料の開発に着手した。そこで提案されたのが、バジルに代えて山椒を使ったジェノベーゼというわけだ。

 

養父が誇る「朝倉山椒」をどう加工するか

養父には、蛇紋岩米や但馬牛、八鹿豚、朝倉山椒、八鹿浅黄といったブランドの産物がある。それを使ってどう高付加価値商品をつくっていくか。「朝倉山椒」は一般的な山椒に比べてまろやかな辛みがあり、香り豊かな一品という評判もあって、国内の高級料理店や、最近ではヨーロッパの三ツ星料理店でも使われているという。

これを使った「山椒ジェノベーゼ」を昨年3月に東京で開かれた国際農畜産物商談会に出展し、好評価を得たことで確かな手ごたえを感じ、容器、ラベル等ブランディングに努め、昨年秋に商品化された。

ジェノベーゼの開発で苦労したのは山椒の変色をどう抑えるかということだという。「酵素の働きで褐変してしまうんです。せっかくの山椒のみずみずしい緑が、茶色くなってしまう。そのために独自の加工技術が必要で。また夏と冬とでは油の硬さが違うので、沈殿したり。とにかく試行錯誤しました」。

 

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材料を撹拌してできたジェノベーゼを、一つひとつ丁寧に瓶へと充填。注文を受けてから、生産、検品、消毒、密封作業と、一日かけて出荷する

村全体が元気になる「しくみ」づくりも

原料の山椒は畑地区で育てた山椒を一房ずつ手摘みで収穫し、加工場に集荷して、加工品にすることで大量の山椒を取り扱うことができる。価格も特産組合が市場価格の変動に影響を受けることなく安定した価格で高く買い上げる。

加工作業も組合員が行うことで地区内に就業の場ができ農業に関わる人の所得を上げる仕組みも同時につくりあげた。耕作放棄されていた農地を山椒畑へ再生する農家も増えつつある。自分のつくったものがブランド化され出荷されるので、モチベーションも上がる。村全体で盛り上げていこうという流れも生まれた。いずれは但馬地方だけでなく、阪神間や首都圏にも販売網を広げたいという。

組合ができて約30年の間に、人口は減り、高齢化も進んだ。想像以上の人気に、今は労働力の確保が大変だと、嬉しい悲鳴を上げている。山椒は葉、花、実、木の幹まで、ほとんどの部分を無駄にすることがなく利用されていることから、「親孝行な朝倉山椒」と呼ばれている。今も過疎の村に仕事を産み、人々を元気にしている。

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畑特産物生産出荷組合

養父市畑地区の約60世帯の人たちが、組合員として運営する。
1981年に結成され、冷凍庫や製品を瓶詰する機械なども整備された作業所では
朝倉山椒の佃煮やジェノベーゼなど加工品を生産する。
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養父市畑481 TEL 079-664-1586

 

 

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