#15 小谷英輔さん


地域に貢献してこそ “企業が農業をやる” その意味がある。


 

現在も図書館製本を中心とする諸製本や古文書の修復など資料修復事業の生産拠点として、専門の職人が腕をふるっている。

現在も図書館製本を中心とする諸製本や古文書の修復など資料修復事業の生産拠点として、専門の職人が腕をふるっている。

雇用維持のために 農業へ進出

5月の澄みきった空の下、収穫に汗を流す人たちがいる。地元の農家ではない。彼らの本職は製本業/諸製本(もろせいほん)。本に関わる職人集団だ。ナカバヤシと聞けば、フエルアルバムや文具のイメージが強いが、実は製本から始まった会社。「諸製本とは出版された本や雑誌など紙媒体を仕立て直す、特殊な製本です」と工場長の小谷英輔さん。

その本業が少子化や電子媒体の普及で需要が減少。企業が利益を出せなくなった場合、まず考えるのはリストラだ。しかし「諸製本」は人の手を介して継承されていく〝匠の仕事〟。「文献という形で知識を未来に残す仕事なので、儲からないからといってやめるわけにいかない」。同社では水耕栽培とニンニク栽培を新たな事業として進めているが、いずれも自社雇用の確保と地元への貢献を考えてのことだという。

 

関宮分工場の建屋の1/4を使用した完全人工光型植物工場。2年目の挑戦のひとつとして、葉ニンニク、芽ニンニク、ホウレンソウ、小松菜、ハーブ類といった農作物の試験栽培も始め、「田舎での工場野菜の価値」を追及。

関宮分工場の建屋の1/4を使用した完全人工光型植物工場。2年目の挑戦のひとつとして、葉ニンニク、芽ニンニク、ホウレンソウ、小松菜、ハーブ類といった農作物の試験栽培も始め、「田舎での工場野菜の価値」を追及。

事業の二毛作としての農業

食に関するものは、継続的にできる仕事だから取り組んでみないかと、社長から提案された。「創業以来42年も養父の地でやってきた私たちが、社会貢献しないといけないだろう」と。そこで誕生したのがプラントセンターだ。工場内で人工光と氷ノ山の天然水を利用し、リーフレタスなどを栽培。昨年は試行錯誤を重ねて、この土地にあった環境設定を追い求めた。

2年目の今は〝儲かる農業〟を目指すには何を育てるべきか、挑戦している状態だという。ヤンマーと取組むニンニク栽培に関して、工場閑散期に仕事を確保するのが目的だった。同社の繁忙期は1月後半から3月中旬に集中する。ニンニクは、5月、6月に収穫、10月、11月に植え付けするため、同社の閑散期と合致。最初はお手伝いだけのつもりだったが、そこは職人。せっかくやるなら自分たちでノウハウを蓄積しようと、耕作放棄地を借り入れて土から再生、栽培までしてしまった。

 

社員の中には兼業農家の人も多く、彼らがリーダーとなって農業事業を引っ張っている。まもなく農作業用のユニフォームもできあがるという。

社員の中には兼業農家の人も多く、彼らがリーダーとなって農業事業を引っ張っている。まもなく農作業用のユニフォームもできあがるという。

儲かる農業の仕組みづくり

工場の近くにはエリア唯一の農業高校である但馬農業高校がある。ここの生徒が〝農業をやりたいからナカバヤシに入りたい〟という流れができたら嬉しいと語る。「今の時代、個人で農業を始めるにはリスクを伴う。農業は好きだが経営はしたくないという人の雇用の受け皿になることも、企業が持続可能な農業をやる価値だと思います。地域から雇用も生まれますし」。

さらに「ナカバヤシがニンニク栽培をする意味」として、種子の安定的供給をあげた。これから養父産のニンニクをブランド化していくために、多くの農家に参加してもらいたい。「そのためには私たちが種子の安定供給と高価な機械が必要な乾燥工程を担い、ヤンマーさんは農機具の提供や栽培のノウハウの公開、そして販路の確保。そうやって農家の負担を減らし、良い作物をつくることだけに専念してもらう。得意なことを役割分担しつつ、一丸となって地域を盛り上げていきたい。そういう〝儲かる農業〟の仕組みをつくらないとね」。

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兵庫ナカバヤシ株式会社

〝情報整理をサポートする製品・サービスを提供する〟ナカバヤシ株式会社の製本専用工場として、1973年に竣工。その後、2008年に兵庫ナカバヤシ株式会社として発足。おもに製本や本の修理・修復を取り扱う工場を養父市内に展開してきた。
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養父市大屋町笠谷111 TEL 079-669-0227
http://www.nakabayashi.co.jp/

 

 

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