#9 自然農法


自然を尊重し、 自然に教わる農法で 豊かな恵みを享受する


「農家の言葉で〝毎年一年生〟というのがあります。天候や土壌など同じ条件が揃うことは二度とないんだから、毎年新たな気持ちで栽培しなさいという意味です」。淡い黄金色の瑞穂で覆われた田んぼを眺めながら、八鹿酒造の水垣篤さんは柔らかな語り口で話す。水垣さんが手がけるのは、秀明自然農法による酒米づくり。これは「自然の力や土本来の力を生かして栽培する」という考え方で、自家採種にはじまり、農薬や肥料なども一切使用せず、清浄な土に本来備えた力を発揮させ作物を栽培するというもの。

酒蔵の長男として育った水垣さんは、この自然農法に惹かれ、三木市で酒米の山田錦を栽培する農家に通い、自然農法稲作を学んだ。Uターン前には東広島市の「酒類総合研究所」で日本酒の醸造講習も受講した。1999年から地元八鹿で本格的に酒米づくりを始めた。太陽と水と土、自然の恵だけで育成する。それは口で言うほどたやすいものでない。苗作りや除草作業などさまざまな場面で手間がかかる。しかしそれすら自然と一体となった苦労であり、多様な命が溢れる自然の声に耳を傾ける喜びでもある。「自然尊重、自然順応。これは昔の人のそのままの生き方。日本人の基礎だと思うんです」。

中山間地の養父市は日射量が少なく水も冷たいため、収穫量は多くないが、自家採種を繰り返した種子から清浄な土壌で育った健全な稲は、安全で安心。米が固く味も濃くしっかりしており、山田錦本来の旨みを備えたものになるという。現在は姫路市の酒蔵に酒米を運び、醸造を委託。しぼれたお酒を貯蔵・濾過・瓶詰めをし商品として販売している。 今後は「醸造も内製化し、酒米栽培からの一貫製造で理想の商品をつくる、六次産業化を目指したい」という。八鹿酒造の「夫婦杉」は八鹿町妙見山の名草神社にあった双子杉から名前をいただいたもの。一粒の米にも壮大な自然のドラマが詰まっており、一献ごとに豊かな命溢れる田んぼの情景が目に浮かぶ、そんな旨い酒になることだろう。

(2016年12月発行 YABUiRO Vol.9掲載)

 

 


八鹿酒造有限会社
約160年前、安政5(1858)年の創業とされる。
戦争中に一度途絶えたが、1956年に水垣さんのお父さんが復活させた八鹿酒造。
「夫婦杉自然米酒」は「養父市ブランド推奨品」にも認定されている。
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養父市八鹿町九鹿461-1
tel 079-662-2032 fax 079-663-1405

 

 

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