#10 高中そば


江戸時代から続く蕎麦の名所。来てくれる人のために歴史を途切れさすわけにはいかない


「蕎麦打ちは力仕事なんです。一玉打ち終わると汗だくになりますよ」。蕎麦を延ばしながら安原よしのさんは言う。「最初は失敗続きでなかなか(笑)。先輩方がつくる姿を見よう見まねで覚えて、自然にこういうようになるまで、長いことかかるんですよ」。

店がある高中峠はかつて参勤交代の折に出石藩の殿様が通り、江戸時代から蕎麦をつくっていたという、由緒正しき土地。 黒々とした地元で採れたそば粉と山の芋だけで打つ素朴な味。この地に昔から伝わる「三たて(ひきたて、打ちたて、ゆでたて)」でつくられ、強い香りとコシがあり、しっかりとした歯ごたえが楽しめる。特製のそばつゆがいっそう風味をひきたてる。

もともと「高中そば」は30年ほど前に、村おこしとしてはじまったもの。高中特産物生産組合の安原徳三郎会長の母、先ほどのよしのさんにとってお姑さんにあたる人が蕎麦づくりのベースをつくり、それが今も途切れることなく引き継がれている。「昔から蕎麦で有名な地域だったので、それに高中そばと名づけて売り出したら、人気が出てたんです」。 当初は会長のお母さんを筆頭に村から10数名の人たちが入れ替わり立ち替わり蕎麦を打ち、接客をした。しかし近年、高齢化が急速に進行し地域の活力が低下するなか、少しずつそのお客さんも減り、かつてのにぎわいも失われつつある。なによりつくり手が減ったことに対して危機感を覚えた組合では、「地域おこし協力隊」を募った。今年4月に入村した石井紅羽さんは、高校生たちがそば打ち技術などを競う『そば甲子園』で優勝したという期待の星だ。

昨年30周年を迎え、記念として『新そば祭り』を開催した。「ここを潰すわけにはいかない。ここを目指してみんなやってくる。だからなんとか継続していきたい。続けていくことがいちばん大切なんです」。そう語る会長の言葉には力強い響きがあった。

(2017年8月発行 YABUiRO Vol.10掲載)

 

 


高中そば

住民でつくる「高中特産物生産組合」が約30年前に「高中そば処」を開業、
地元産そばと山芋だけでできた本格手打ち蕎麦は、原料を厳選し家庭の味を大切にした味。
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養父市奥米地604-2
tel 079-665-0364(高中特産物生産組合)
http://kounakasoba.jimdo.com/

 

 

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