#21 飯野 一生さん


誰しも「ただいま」と 帰ってこれる 心のふるさとに。


近くには不動滝があり、広葉樹がもつ春の新緑と秋の紅葉など、四季彩とともに過ごせる宿。この自然のなかで育った息子は、プロのスノーボーダーとして現在も活躍中。「都会に出た娘も子どもは田舎で育てたいと、近くで暮らしはじめたんです」と嬉しそうに語る飯野夫妻。

子どもたちを自然のなかで
のびのびと育てたい

若杉高原の深い緑に包まれた山の奥座敷。すぐ近くには不動滝。こちらに「こころの里 懐」はある。都会の喧騒を離れ、恵まれた自然環境のなか、土と親しみ、季節の移ろいを肌に受け、五感を満たして暮らす。そんな憧れの田舎暮らしを求めて、飯野一生さん一家が神戸から、この地に移り住んで25年の歳月が過ぎた。

飯野さんは大阪市内で生まれ育ち、神戸のアパレルメーカーに就職。妻の愛子さんと結婚後は神戸で暮らしたが時はバブル、連日夜遅くまで働く日が続く。育ち盛りの子どもとも週末しか遊べない。「自分が都会で生まれ育ったため、子どもは自然のなかで育てたい。彼らにふるさとと呼べるところをつくってあげたい」。休みの日に行ったキャンプで子どものイキイキした姿を見るたび、その想いは強くなっていった。そして35歳のときに意を決して退職。念願の田舎暮らしのために一年をかけて場所を探し、辿り着いたのが大屋町だった。

「Iターンという言葉もない頃で、多くの土地で門前払いを食わされました」。前例のない都会からの移住は多難な幕開けだったが、大屋町役場の人だけは親身になって、住む場所や仕事を紹介してくれた。「いずれは自然の多い場所でペンションをしてみたい」と考えていた夫婦は、おおやスキー場「ロッジふじなし」の管理をしながら、民宿経営や調理などを学ぶ。同時に古民家で五右衛門風呂や囲炉裏などの改修をおこない、田舎暮らしを満喫してきた。

 

(左)薪でわかす昔ながらの鉄製の五右衛門風呂は、2種類の生薬入りの湯。希望者には薪割り・風呂沸かし体験も。
(右)夕食と朝食は、この囲炉裏を囲んで創作薬膳料理が楽しめる。本当に田舎暮らしをしているような体験。

一日一組だからできる
心尽くしのおもてなし

子どもの独立を機に、2年前オープンした「こころの里 懐」は住まいである築約150年の古民家を改修した、一日一組限定の宿。養蚕農家であった三階建の建物は、効率よく蚕を飼うための低い天井もそのまま。そんな古き良き佇まいにカリモクのテーブルセットが美しく調和する。美味なる創作薬膳料理、極上のリネンやアメニティ。これらのサービスは理想の宿を求めて、マイナーチェンジを重ねて完成した。「お客さん一人ひとりに、心づくしのおもてなしをしたいから」と決めた、一日一組限定はその象徴である。薬膳料理にこだわるのは、病気の予防と日常の健康維持から。夕食は季節に応じた鍋をはじめとした和の薬膳料理、朝食は手作りパンや鹿肉のスモークなど洋の薬膳料理。食材も基本的につくれるものは自分たちの手で。有機栽培の野菜にパン、おぼろ豆腐、こんにゃく、ぬか漬けなども原材料から添加物を使わず手づくり。そういった手間暇をかけてようやく、一日一組に最高のおもてなしができる。

思えば何をするにも前例のないことづくしの道のりだった。時間をかけて土地になじみ、人とつながり、自分たちが思い描くもてなしの宿をつくりあげた。子どもたちにふるさとをつくりたいと考えての移住。それがいつしか、宿を訪れる人にとってもふるさとになっていく。「はじめて来たのに懐かしい、そう言われる方も多いです」。(2017年12月発行 YABUiRO Vol.11掲載)

 


 

こころの里 懐(かい)

明治時代に建てられた3階建て養蚕農家を改修した、但馬初、1日1組限定の古民家の宿。
食事は心と健康と美味しさにこだわった創作薬膳料理。
自然に囲まれた静かな空間で、心ゆくまでくつろげる。
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養父市大屋町若杉547-3
TEL 079-669-1678
http://www.katashima.co.jp/

 

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