#2 湯葉づくり


湯葉本来の風味、舌触り、美味しい湯葉をつくるため一枚一枚、丁寧に。


昔は町に一軒は必ずあった豆腐屋や乾物屋が姿を消して久しい。それにともない湯葉のつくり手たちも店を畳まざる得なくなり、湯葉は精進料理や高級な懐石料理でしかお目にかかれなくなった。一方で昭和9年から湯葉づくりを守り続ける職人がいる。

「ゆば甚」二代目にあたる松田正司さんは、高校を出てすぐこの世界に。「今62歳だからもう40年以上。豆は全部石臼で挽いていたし、あの頃は全部手仕事。今は豆乳の製造ではプラントを独自に改良し、昔の製法に近づけるように、豆乳を疲れさせないようにつくっている」。

材料となる大豆はカナダとアメリカと国産のものを4:3:3の割合でブレンド。自分がつくりたい湯葉を求めて試行錯誤の末、この配合に落ち着いた。「豆よりは、漬け具合の方が大切」。大豆の浸漬時間や炊き加減は風味を左右する大切な作業で、経験に頼るところが大きい。前日の晩に大豆を井戸から汲み上げた水に浸して膨らませる。豆の状態や気象条件に応じて、微妙な水加減や温度管理ができなければ、美味しい湯葉はつくれない。毎朝5時に起きたら、すぐに豆の浸かり具合をチェックし、水を抜く時間を調整。「豆の張り具合は手が覚えているから」。

製法も大豆を挽いて絞った豆乳を湯せんするというシンプルなものだが、興味深いのは湯せんの経過時間によって湯葉の厚さや種類が違ってくるところ。豆乳分が多く、どろっとしている汲み上げ湯葉は、柔らかな湯葉をそっとつまみ上げ、豆乳をからめるよう器に移し、生湯葉は竹の串でさっと引き上げる。松田さんは微妙なタイミングを見計らって、つくり分けていく。厚くなっては美味しくないし、慌てて薄すぎると失敗する。一枚、一枚、丁寧に、素早く。そうやってでき上がった湯葉は、奥深い大豆本来の甘味がする。

最近は息子さんも手伝い始めたと、顔をほころばせる松田さん。「但馬は雨の多いところだから、水も豊かで湯葉づくりには向いている土地。だからこそ、この地で続けたい。いつかは、できたての湯葉を食べられるような場所もつくりたいね」。

(2013年8月発行 YABUiRO Vol.2掲載)

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waza02_info ゆば甚/有限会社 松田甚兵衛商店
創業以来「ゆば」一筋に80年近く。遺伝子組み替え大豆は使用せず、井戸水をポンプで汲み上げて使用した「生ゆば」を製造。東京、京都の料亭ヘの卸しのほか、ネット販売も。
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兵庫県養父市小城597
tel 079-664-0258
http://www.yubaya.com/

 

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