直して、張り替え、 使い続けることで 建具も歴史を刻む
日本建築の間仕切りである「建具」には、長年使い続けるための工夫だけでなく、住空間を楽しむ、自由な遊び心にも溢れている。天然木の木目、色合い、香り、手触り、それぞれに表れる個性を職人が見極め、一つひとつ手仕事で建具をこしらえる。
「建具はふすまや障子を張り替え、部分的に壊れても修理をして、同じものをずっと使えるようにつくるもの」。そう語るのは福田建具店の2代目 福田通良さん。建具師の仕事は、いい納まりをつけて家づくりを締めくくる「最後の調整役」だとも。それには目の詰まり方やねじれ、反りの可能性など、数多くある木の特性に対する豊かな知識や経験も必須。建具づくりは木取りからはじまる。大きな板から建具の部材を切り出してゆく作業で、これが出来を左右する。木目が少し曲がって癖があるところは下桟にというように、適材適所の木取りをしていく。
驚くことに設計図は使わず、頭の中で計算してつくっていく。その後、削って厚さを決め、ホゾやホゾ穴の加工をして組み立てへ。木を切り込むサイズの微調整は、コンマ1ミリ単位の精密さが求められる。そんな技を磨くために自主的に技術検定を受け、ものづくりマイスターや兵庫の匠にも選出されたが、「自分の技術はまだ中学生レベル」と謙遜する。「建具も凄いものになると芸術品のレベルですから」。
今後はさらに技術を高めるとともに、建具を見せる場をつくりたいという。「生まれた時から洋風の家で育てば、本物の建具を見る機会もない。建具師も減って、〝たてぐ〟と読める人も少なくなっています」。だからこそ作品を見て、触って、ワークショップで体験もできる、そんな風に建具を発信できる場所があれば、興味を持ってもらえるかもしれない。
もう一つの課題は、今の生活様式にあう建具の提案だ。現在、長男がデザインの学校に通っており、いずれは仕事を手伝ってくれる。父の技と息子のデザイン、それが融合された作品が見られる日も近い。
(2017年12月発行 YABUiRO Vol.11掲載)
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福田建具店 1958年設立。おもに金属・木製建具製造業を営む。 |