#1 西村秀子さん


受け継がれた 味噌だから今日がある、その原点は守りたい 。


家業を手伝うようになって20年という西村秀子さん。仕込みには杉の木桶と井戸水、後ろにある三州釜(さんずがま)や和釜(わがま)を使い大豆を煮る。それは創業以来ずっと変わらない。

家業を手伝うようになって20年という西村秀子さん。仕込みには杉の木桶と井戸水、後ろにある三州釜(さんずがま)や和釜(わがま)を使い大豆を煮る。それは創業以来ずっと変わらない。


蔵で遊び、蔵で育つ。その中で見えてきたもの。

創業から260年。電車からも見える「こがね味噌」の煙突は、昔も今も変わらぬ八鹿町のシンボルだ。住まいと一緒になった蔵は明治時代に建て替えられたもの。

「大学に上がるまでずっとここで育ちました。会社といっても家業ですし。私は一人っ子なので、いずれは蔵を継ぐんだろうなとは思ってました」。そう語るのは西村秀子さん。蔵は幼い西村さんにとって格好の遊び場であり、常に身近な存在だった。「職人の邪魔しながら、見様見まねでしゃもじを持ってお手伝いしたり、広い蔵でかくれんぼしたり」。

そんな子ども時代から蔵の奥にある、熟成用の杉の木桶。一年間の熟成期間に木桶自体が味噌を吸収し、これまでの発酵菌を味噌に移してくれるという。木桶と味噌が互いに呼吸しあいながら、昔変わらぬ味噌を作ることができる。 朝は4時に起きて麹室の温度管理や仕込の下準備。職人が来ると仕込にかかる。味噌は水に浸けた大豆を煮て、麹と塩を加え、熟成させる。「自分では、こんな麹、こんな味噌がつくりたいという理想があって、そこに向けて丹精込めてつくっているのですが、本当にむずかしいです」。

蔵で働くのは「腕を磨いてもらっている最中」という、20〜30歳代の若い職人たち。彼らは毎日、自主的に日記をつけているという。今日やったこと。失敗した時は何が原因か。それを書き留め、次につなげる。生真面目に味噌づくりと向き合う彼らの姿を見守る、その西村さんの目は厳しくも優しい。

 

味噌の良しあしを決める麹づくり。頼りになるのは職人の感覚。麹を育てる過程では、育ちムラがないか手のひらで探り、対話するようにじかに麹と向き合う。

味噌の良しあしを決める麹づくり。頼りになるのは職人の感覚。麹を育てる過程では、育ちムラがないか手のひらで探り、対話するようにじかに麹と向き合う。

但馬の味噌を守る。それが「老舗の使命」。

味噌は調味料としての歴史も古く、各地域ならではの味噌がつくられ、郷土料理には欠かせない。

現在、但馬地方でも専業で味噌づくりをしているのはここだけ。だからか地元の味を守らねば、という自負も感じられた。「但馬地方は豪雪地帯で、本来は東北地方と同じ辛い味噌だったんです。それが風土に合った味。色も濃いしね」。

最近では子ども向けに体験学習もおこなっている。「味噌のつくり方を知って、実際に食べて美味しいって思ってくれたら、大人になった時、自分でもつくって食べてくれるでしょ」。そのための原体験づくりに一役買っているのだ。

この仕事に就いてはや20年。「えらい所に戻ったなというのが本音(笑)」。当時はなぜ機械化しないのか不思議だった。「でもいざ手伝い始めると分かるんです。麹づくりだけは絶対、人の手でやらないとダメだと」。

最後に、今後についてたずねると「260年培ってきたやり方で今を守るのか、時代にあった効率のよいやり方で進むのか決めかねているけれど、今は自然の流れに任せてもいいかなと」。ただ受け継がれた味噌だから今日がある、味噌かくあるべしという、原点だけは変えずにいたい。「幼い頃から祖父や父の商売に賭ける後ろ姿を見てきたからこそ、今日があると思います。歴史にしがみつくのではなく、土台としてさらに上を目指して登っていきたい」。(2013年2月発行 YABUiRO Vol.1掲載)

 


 

people01_info こがね味噌株式会社
創業は宝暦元年(1751年)。手づくりを主に、ひとつひとつ丹精をこめ、
但馬地方に受け継がれた味噌の味わいを、今もなお守り続ける老舗の味噌屋。

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兵庫県養父市八鹿町八鹿343-1
TEL 079-662-2648
http://www.koganemiso.co.jp/

 

 

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