#5 浄慶耕造さん


微生物の働きに任せた天然醸造こそが本物の醤油なんです。


天然醸造室は部屋まるごと酵母たちの住処になっていて、醤油をつくる桶はもちろん壁や床も杉でできている。蔵に住み着いた微生物が醤油を1〜2年かけ醸していくという伝統的製法・天然醸造を守る、大徳醤油3代目の浄慶耕造さんと息子の拓志さん。

 

時代の変遷とともに変わりゆく、醤油屋の姿。

その昔、醤油は買いに行くものではなく、醤油屋が運んでくるものだった。 それも客の家族構成や嗜好から消費量を割り出し、少なくなった頃を見計らい配達する。集金は盆と暮れだけ。つくり手と客の間の信頼関係があってこそ成り立つやり方だ。

1910年に創業した大徳醤油株式会社、浄慶耕造さんが3代目を継いだ時も、この「置き回り方式」という販売方法だった。

今日のように店で買うことが当たり前になったのはここ数十年。醸造メーカーが脱脂大豆で大量生産できる機械を開発してから。脱脂大豆とは大豆から油を抽出した残り。表皮が砕かれているので早く製品化できる上、二次使用で安いため大量生産が可能になり、大手と中小企業の差がみるみる開いた。さらに適温醸造(もろみを加温して発酵期間を短縮する方法)が主流となり、蔵付き酵母で長期熟成させる天然醸造という醤油づくりの姿も変わってしまった。

 

 

 

圧搾室では、もろみを風呂敷で包むように、布を一枚一枚折りたたむ。何十枚と重ねた重みで時間をかけて自然に搾られ、透明度の高い赤褐色の美しい生揚(きあげ)ができる。

地元産で安全な醤油をつくる、小さな醤油屋の存在意義。 

そんな状況で「自分たちは社会に必要とされる醤油屋たりうるのか」という考えが浄慶さんの中に芽生えた。「安全な醤油をつくること、そして但馬の醤油屋なら地元の原料でつくることこそ使命だと思った」。そこで食品添加 物無添加・天然醸造・国産原料と高付加価値商品へと転換。地元の大豆・小麦を使い国産丸大豆醤油の生産を開始する。それが小さな醤油屋が生き残っていく道だと信じて。

四半世紀ぶりに思い描いた純但馬産の醤油をつくれた時は、とにかく嬉しかったという。その後も安全性を追求し、有機JAS認定を取得、国産有機醤油や有機ドレッシングを展開。

さらに、いのちの恵みを活かしきる資源の循環という視点から生まれたのが、〝とびうお醤油〟。すでに醤油を搾った後の粕を牛の餌にする循環の姿はできていた。今度は魚の内臓という水産廃棄物を魚醤にし、搾り粕を豚や鶏の飼料にする。安全で美味しいものだからこそ、生態系の中で循環され、廃棄物もゼロにできるのだ。

 

天然醸造の醤油だから人の体にも優しい。

大徳醤油ではできる限り、生産農家の顔が見える原料を使用することを心がけている。生産者に直接会い、想いを聞かせてもらうことで関係も築くことができ、安定供給へも繋がる。さらには消費者とも繋がりたいという。それは冒頭に書いた、昔から誰がつくって誰が使うか、顔の見える商売をしてきたから。だから工場見学にできるだけ来てもらうようにしている。「醤油のつくり方を理解してもらった上で、自宅でつくれないから大徳さんにつくってもらうわ、という関係を築きたい」。

30年以上醸造に携わってきた浄慶さんだが、今は原点に戻り、伝統製法=天然醸造の意味を考えてるという。「四季の温度変化の中で蔵に住み着いた微生物が醤油を醸していく中に、素材を生かす醤油、人の体に優しい醤油の姿があると確信しています。これを数値で示してきちんと実証したいですね」。  (2013年12月発行 YABUiRO Vol.3掲載)

 


大徳醤油株式会社
杉材で作った天然醸造蔵で一年以上熟成させ「素材の味を活かす」醤油作りにこだわる大徳醤油。「有機・地域・伝統」をキーワードに、生産農家・地域と連携することで新しい価値の創造に取り組んでいる。

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兵庫県養父市十二所930-3

TEL 079-663-4008
http://www.daitoku-soy.com/

 

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