#6 山本昌実さん


但馬の風土が育む鶏で古くから続く地域産業を盛り上げていきたい。


2013年8月、代表取締役に就任したばかりの山本昌実さん。「自分にとって未知の世界に飛び込んで8年。加工センターや肥料づくりまで、ようやく地固めはできてきたから、今は種をまいて芽が出るのを待つ状態です」。

個性豊かな但馬産のブランド鶏を地元から発信していく。

かに美鶏と高原但馬どり。養鶏業発祥の地といわれる但馬地方で、新たに注目を浴びるブランド鶏だ。健康な鶏を育てたい、ならば餌を工夫しようと実にシンプルな発想から生まれた。

高原但馬どりはアルファルファと米ぬか、かに美鶏はそれに、カニ殻をブレンドした特製飼料で育てられている。「カニ殻は古くから伝わる養鶏技術です。美味しいものをあげるとよく食べ、しっかり餌を食べた鶏は健康に育つ。当然、肉も美味しくなる」。そう語るのは、山陰農芸株式会社の山本昌実さん。新鮮な空気が流れる状態で運動ができ、ストレスのたまらない環境をつくるなど飼育方法も変えた。それが臭みのない美味なる鶏肉をつくりだす。

山本さんにとって、養鶏業が生まれた但馬への想いは強く、産地を兵庫県に限定するため直営農場を中心に飼育し、ネーミングにも但馬や山陰の名産カニを冠して、地元色を打ち出す。販売方法も今後は、現在のネット直販に加え地元の道の駅などに置くことを考えている。「田舎から発信する方が面白いかなと」。

 

「養鶏は環境と餌がすべて」。その言葉通り、徹底した飼育管理と衛生管理プログラムのもと、地元但馬産の健康な鶏を大切に育て上げている。

 

台風が運命を変えた。農業と数字の関係に魅せられて。 

2004年10月に発生した台風23号は、養父市をはじめ、豊岡市を中心に県内の広い範囲で大きな被害をもたらした。山陰農芸も例外ではない。一時は壊滅状態に陥ったという。

当時、IT関係の仕事に就いていた山本さんが入社したのも、この台風がきっかけだという。だが仕事をするうちに、自分の常識が通用しない世界だと痛感する。そのかわり、手つかずの分野も多く、可能性も感じていた。

養鶏場がホームページを立ち上げたり、ITとは縁遠かった業界が転換期に指し掛かっていたことも幸いした。きまぐれな自然と共生する仕事だからこそ、数字の大切さも知った。「畜産や農業は美味しいものをつくればいいと思われがちですが、実際は緻密な数字の世界。きちんとやっている人ほど数字にこだわっている」。そこでこれまでの経験と現在が繋がり、ある種、運命めいたものも感じたという。旧態然としたシステムを、数値化してすぐ見られるものに変え、先に挙げた鶏のブランディングにも取組みはじめた。

 

朝引きの鶏はこの加工センターでカットされる。鶏肉は賞味期限が短いため、鮮度を保つための温度管理が重要。衛生面に関しても、カメラで常時確認している。

鮮度を保ち、無駄を無くす加工センターの存在。

「うちの鶏の特徴は、まず臭みの少なさ。もう一つは鶏の最大の美味しさである鮮度を大切にしていること」。

飼育~販売までの一貫体制、それを支えるのが、時間をかけずに朝引きの新鮮な状態で出荷できる加工センターの存在。たとえば、もも肉に比べると人気が落ちる胸肉もここで味付し、チキンカツにして売るなど、無駄を出さず逆に付加価値をつける役割も担っている。

無駄を出さないといえば、鶏糞処理体制の確立もそうだ。3年前から自社ブランドの肥料をつくりはじめ、ようやく軌道に乗ってきた。今後は道の駅で、例えばスナックのように手軽に食べられ、旅の思い出として記憶に残るメニューを手がけてみたいという。その味から但馬に想いを駆せることができる逸品、その誕生が今から楽しみだ。(2013年12月発行 YABUiRO Vol.3掲載)

 


山陰農芸株式会社
創業66年。但馬の地で、飼育から販売まで一貫した生産体制に取り組む。
兵庫県但馬地方限定でブランド鶏を生産している。生産羽数は年間220万羽。
鮮度にこだわったブランド鶏を関西全域に毎日出荷している。


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兵庫県養父市八鹿町浅間1460

TEL 079-662-8090
http://www.kanimidori.com/

 

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