#3 臼づくり


臼づくりに設計図はない。何度も掘って削って 感覚を体に染み込ませる。


カツン、カツン、木を削る音が静かな集落に響きわたる。

つくっているのは餅つきの臼。まずは高さ分に切り、外側を整える。円柱にし、センター位置が決まったら穴を掘っていく。十文字に3回チェンソーを入れて、3回目で深さを決める。内径に対する比率で深さは決まってくる。それが終わったら手斧(ちょうな)で掘る。中ができたらカンナがけ。外側を整え塗装して仕上げる。完成までは頑張っても丸二日。5~9月は切った瞬間に木が動き、割れが入ってしまうため、臼づくりはできない。

15年ほど前に師匠である先代と出会った才木康介さんは、翌日から工房に通うようになる。とはいえ最初の3年はひたすら臼をはつる=中を削り取る作業だけをさせられた。「だいたいの幅と深さは決まっているが、設計図はない。だから側面と底を繋げるアール部分は完全に感覚なんですよ。最初は深かったり浅かったりで、全然均一にできない」。だが毎日繰り返すうちに、なんとなくコツがつかめてきた。それから、臼づくりが俄然面白くなった。

工程の中では仕上げにこだわっている。仕上げに塗料を塗ることで割れを防ぎ、強度が大幅に上がるからだ。そして一番むずかしいのもその塗装だとか。「意外でしょ(笑)。塗装は奥が深いんですよ。塗りは工程を入れれば入れるほど、きれいになるし、深みも出る。温度湿度も関係するので、余計難しい」。

臼の素材となる本欅(けやき)は木材市場で仕入れる。その判断基準は根元の断面だけ。目が素直だと割れやすいため、柱材のような真っすぐな木は適さない。あえて「ごんたくれ」と呼ぶ、木目が込み入り複雑なものを選ぶ。「削った木目もごんたくれの方が色っぽい」。木目について話す才木さんは本当に楽しそうだ。だから、毎日木に触れてる大工など木にこだわる人が、自分の臼を理解してくれた時がいちばん嬉しい。「臼づくり自体は誰でもできるんです。木の善し悪しを判断する〝目利き〟こそが、臼職人の技じゃないかな」。

(2013年12月発行 YABUiRO Vol.3掲載)

 

waza03_sub


金の臼
2002年より二代目臼職人・宮島久夫の跡を継ぎ、欅でつくった昔ながらのシンプルな餅つき臼、杵の製造・販売を開始する。オーダーメイドの発注も可能。
_
兵庫県養父市八鹿町岩崎148
tel 079-662-0111
http://www.usuya.jp/

 

こちらの記事もオススメです

  • #4 但馬木彫#4 但馬木彫 木と向き合い、自分と向き合い、作品を産み出し続ける。 大屋町を散策し […]
  • #5 八鹿浅黄#5 八鹿浅黄 人に支えられ、 […]
  • #6 かいこの里#6 かいこの里 蚕によって支えられた、 […]
  •  #2 湯葉づくり #2 湯葉づくり 湯葉本来の風味、舌触り、美味しい湯葉をつくるため一枚一枚、丁寧に。 […]
  • #8 赤米づくり#8 赤米づくり 都に献上されたという 郷土の誇りをいつまでも […]