#1 朝倉さんしょ<前編>

歴史ある朝倉山椒が新たにブランドとしてよみがえる。

養父市朝倉に古くから伝わる朝倉山椒。栽培が難しく、原産地でありながら生産量が伸びないことが悩みだったが品質改良を重ね、数年前に枯れにくい苗の開発に成功。「朝倉さんしょ」ブランドとして新たな発信が始まっている今、3人のキーパーソンにお話を伺いました。

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四百年以上も 昔から存在した 由緒正しき朝倉山椒

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献上の際に、包装の和紙に品名を記すために使った版木「朝倉御山椒」を、『出石藩御用部屋日記』などの文書をもとに桜の木で復元

 

「朝倉山椒が初めて歴史に登場するのは、今から400年以上も前のことです」。朝倉山椒の歴史に詳しい茨木信雄さんによると、1611年、生野銀山を管理する生野代官・間宮直元が徳川家康に〈朝倉山椒ヲ捧グ〉と『銀山旧記』に記されているという。「江戸時代には出石藩、篠山藩なども江戸幕府に、代々、朝倉山椒を献上しており、篠山藩が献上に使ったとされる丹波焼で焼かれた朝倉山椒壺や、出石藩の版木も存在します」。つまり朝倉山椒は、大名の献上品としてはじまった逸品として諸国に知られ、とくに養父郡朝倉村産が最上品として珍重された歴史を持つ。

安土桃山時代の堺の茶人・津田宗及の『茶湯日記』にも、茶会で使われたとの記載がある「朝倉山椒壺」の古丹波焼を再現したもの

安土桃山時代の堺の茶人・津田宗及の『茶湯日記』にも、茶会で使われたとの記載がある「朝倉山椒壺」の古丹波焼を再現したもの

当時は庶民には口にできない高貴な食材であった朝倉山椒は、果房・粒がともに大きく、実の左右に小さな孫実(まごみ)がつき、豊産性で香りも強いのが特徴。山椒独特の渋みも無いので、まろやかで甘みのある味と香りがある。

朝倉山椒の原産地や自生群について調べている養父市の元職員・茨木信雄さん

朝倉山椒の原産地や自生群について調べている養父市の元職員・茨木信雄さん

その名前を一躍有名にしたのが、昭和3年に植物学者 牧野富太郎が記した『植物研究雑誌』。朝倉の地で出会った、幹や枝に棘がなく、栽培しやすい、辛みの少ない山椒の品種を〝アサクラザンショウ〟と定義づけた。「これによって産地に関係なく、棘のないものは、すべてアサクラザンショウと呼ばれるようになりましたが、発祥の地は、養父市八鹿町朝倉です」。寺島良安が江戸時代中期に編纂した百科事典『和漢三才図絵』によると、「朝倉山椒の始まりは、但馬朝倉谷の両岸皆椒樹で、四・五町歩の面積に群生し…」と記録し、農業全集、大和本草など、多くの古書にも紹介されている。

最近では、朝倉山椒の樹齢100年級の木が、養父市北、中部の山中や山すそに点在していることがわかった。朝倉山椒は、地元農家やJAなどの取り組みで栽培本数を増やしているが、そのほとんどは接ぎ木。「この発見からも、この土地が朝倉山椒の栽培に、いかに適した環境だったかということがうかがえます」。

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枯れにくい苗を追い求めた長い歳月

「原産地に朝倉山椒を取り戻す」。その想いだけで、ここまできた

朝倉山椒組合 組合長の才木明さん。若い時には他所に勤めながらも山椒の研究をしており、組合の活動期間よりも長期に渡って取り組み続けている。

朝倉山椒組合 組合長の才木明さん。若い時には他所に勤めながらも山椒の研究をしており、組合の活動期間よりも長期に渡って取り組み続けている。

在来種の朝倉山椒を継承して栽培してきたのが、朝倉山椒組合 組合長の才木明さんだ。組合は1977年に設立。朝倉山椒発祥の地として、1996年に枯れにくい接木苗(つぎきなえ)の開発に成功し、JAたじまを通じて但馬地域の農家に苗を配布して山椒の増産に励んでいる。

この優良苗をつくるにあたって、まず難しかったのは、栽培技術が確立しておらず、資料がないこと。藩政時代にこの地区を治めた出石藩が門外不出にしたために、朝倉山椒の原産地での栽培は衰退し、昭和初期には農家が自家用として庭に数本植える程度だった。そこで、育てた経験のある人への聞き取り調査から始めた。

 

「この伝統を絶やしてはいけない」。そんな気持ちが強かった。

そこでまず、最大の問題である〝枯れやすさ〟に直面する。「山椒の木の根は深く下へ伸びずに横に根を張る。だから根がとても浅いんです」。乾燥して枯れやすい反面、水はけが悪いと根腐れもしやすい。「少しでも枯れにくい木を探しては印をつけ、接ぎ木をしてをひたすら繰り返しました」。ただ、枯れにくい木というのは、発芽もしにくいため、克服するためにさらに歳月を重ねたという。

研究と技術革新によって、才木さんの苗は枯れにくいだけでなく、多ければ一房に100粒も実がつき、ひとつの木で10キロもの収穫も見込めるものになった。

昨年秋には、実付きを良くするために、雄の強い苗木(花山椒)を開発し、受粉効果により、実がより多くつくようにしている。「研究課題はまだまだありますが、私は良いものをつくっていくだけ。歴史を守りながら、農家を助けていきたいんです」。 

 

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